コンテンツにスキップします

賃貸経営PLUS

オーナーと管理会社のための実務ナビ

プライマリメニュー
  • 賃貸経営ニュース
  • 賃貸経営
  • 空室対策
  • 管理会社
  • 管理実務
  • トラブル対応
  • 判例解説
  • 不動産の知識
  • その他
TOP
  • 家
  • 判例解説
  • 【判例解説】賃貸人による自力救済と不法行為責任(東京地判 平成30年3月22日)
  • 判例解説

【判例解説】賃貸人による自力救済と不法行為責任(東京地判 平成30年3月22日)

Taro 2026年1月21日

本件は、賃料滞納を理由として、賃貸人が賃借人不在中に居室への立入りを不能とし、さらに家財道具一式を撤去・処分した行為について、その適法性が争われた事案です。裁判所は、賃貸人による一連の行為はいずれも許されない自力救済に該当し、不法行為責任を負うとして、賃借人に対する損害賠償を命じました。

  • 裁判所・日付:東京地方裁判所 平成30年3月22日判決
  • 事件類型:賃貸人の自力救済行為に関する損害賠償請求
  • 結論:賃貸人の不法行為を認定し、約170万円超の支払を命令

※事件番号は公開情報の範囲では確認困難なため、裁判所名・判決日で特定しています。

事案の概要

賃借人らは、賃貸人が所有する建物の一室について定期建物賃貸借契約を締結し居住していましたが、一定期間にわたり賃料等を滞納していました。

これを理由に、賃貸人は、賃借人不在中にロックを物理的に遮断する措置を講じ、入室を不能としました。その後、契約解除・明渡合意書への署名押印を迫り、署名に応じた場合のみ入室を認める対応を取りました。

さらに賃貸人は、居室内の家財道具一式を撤去・処分し、写真や手紙などの私的・感情的価値の高い物品も失われました。これにより、賃借人らは居住の場を奪われ、精神的・財産的損害を被ったとして損害賠償を請求しました。

判決の要旨

  1. ロックの物理的遮断行為:賃貸人が裁判手続きを経ずに賃借人の占有を排除する行為は、許されない自力救済に該当する。
  2. 家財道具の撤去・処分:賃借人の同意なく動産を処分する行為は、占有権および所有権を侵害する不法行為である。
  3. 合意書の効力:入室を妨害し心理的に追い込んだ状態で署名させた合意は、公序良俗に反し無効と判断される可能性が極めて高い。
  4. 損害額:家財の時価に加え、写真・手紙等の代替不可能な品を失わせた精神的苦痛を重く評価し、高額な慰謝料を含む約176万円の損害を認定。
  5. 賃料請求の可否:賃貸人が使用収益義務を履行していない期間については、賃料請求は認められない。

位置づけと実務上のポイント

1. なぜ自力救済は厳しく禁止されるのか

自力救済が禁止されるのは、法治国家において紛争解決は裁判所を通じて行うべきであり、実力行使を認めると社会秩序が著しく損なわれるためです。賃料滞納という正当な理由があっても、手続きを飛ばすことは一切認められません。

2. 慰謝料リスクの重さ

本件では、家財の経済的価値だけでなく、思い出の品を失わせた精神的苦痛が高く評価されました。実務上、ここがオーナーにとって最も見落とされがちな高額リスクです。

3. 「後から合意書」は通用しない

違法な自力救済によって追い込まれた状況下での合意は、後から署名があっても違法性を覆しません。脱法的な手法は裁判で厳しく否定されます。

4. 相殺できない可能性への注意

不法行為に基づく損害賠償債務は、性質上、滞納賃料との相殺が制限される場合があります(民法509条)。「相殺すればゼロになる」という発想は非常に危険です。

5. 実務対応の指針

  • 鍵交換・入室制限・家財撤去は絶対に行わない
  • 解除通知・明渡訴訟など法的手続きを厳守
  • 管理会社・オーナー間で自力救済禁止の共通認識を徹底

まとめ

東京地判平成30年3月22日判決は、賃貸人による自力救済行為を明確に違法とし、高額な損害賠償責任を認めた事例です。賃料滞納があっても、実力行使は一切許されず、金銭的にも極めて大きなリスクを伴うことを示した、強い警告性を持つ判例といえます。

用語紹介

自力救済
裁判等の法的手続きを経ず、実力行使によって権利を実現しようとする行為。原則として禁止される。
占有権
物を事実上支配している状態を保護する権利。自分の所有物でなくても、「今使っている」状態自体が法的に守られる。
不法行為
故意または過失により他人の権利や利益を侵害する行為で、損害賠償責任が生じる。
使用収益義務
賃貸人が賃借人に対し、目的物を使用・収益させる義務。

出所

  • 東京地判 平成30年3月22日(賃貸人による自力救済)

※判決本文は裁判所の裁判例検索や各種判例データベースでの確認を推奨します。


判例解説 一覧へ

著者について

Taro

Administrator

首都圏在住。管理会社に勤務し、賃貸管理業に従事しています。 事業主側で不動産売買と収益物件の管理を経験し、その後、現在の管理会社に転身しました。 保有資格: 宅地建物取引士 賃貸不動産経営管理士

ウェブサイトにアクセスしてください すべての投稿を表示します

投稿ナビゲーション

前: 屋外リビング付き賃貸とは|体験価値で選ばれる物件を作る実務ポイント
次へ: ヴィンテージ/レトロ賃貸とは|築古を価値に変えるリノベ戦略と実務のポイント

関連するストーリー

判例解説
  • 判例解説

【判例解説】入居前キャンセルと賃貸借契約の成立時期(東京地判 平成29年4月11日)

Taro 2026年1月26日 0
判例解説
  • 判例解説

【判例解説】更新料不払いと賃貸借契約解除(東京地判 平成29年9月28日)

Taro 2026年1月25日 0
判例解説
  • 判例解説

【判例解説】賃貸マンション建築における不当勧誘と説明義務違反(東京地判 平成28年10月14日)

Taro 2026年1月24日 0
運営者情報



Name:Taro

首都圏在住。管理会社に勤務し、賃貸管理業に従事しています。
事業主側で不動産売買と収益物件の管理を経験し、その後、現在の管理会社に転身しました。

保有資格:
宅地建物取引士
賃貸不動産経営管理士

LED New life in Japan さくら市 インターネット ガイドライン クレーム対応 テーマ賃貸 下野市 人気設備 保証 入居前点検 共用部 判例 判例解説 制度改正 原状回復 吾妻郡 塩谷郡 壬生町 大田原市 宇都宮市 定期借家 小山市 日光市 普通賃貸借 栃木市 栃木県 正当事由 相続 真岡市 矢板市 空室対策 立ち退き 管理会社 群馬県 自力救済 賃貸経営 足利市 連帯保証 遺言 那須塩原市 騒音 高根沢町 高齢者 鹿沼市

  • お問い合わせ
  • このサイトについて
  • 利用規約 / プライバシーポリシー

お見逃し記事

判例解説
  • 判例解説

【判例解説】入居前キャンセルと賃貸借契約の成立時期(東京地判 平成29年4月11日)

Taro 2026年1月26日 0
2025年 テーマ賃貸
  • 空室対策

テーマ賃貸・成功判断チェックリスト|始める前に必ず考えるべき実務と思考整理

Taro 2026年1月26日 0
判例解説
  • 判例解説

【判例解説】更新料不払いと賃貸借契約解除(東京地判 平成29年9月28日)

Taro 2026年1月25日 0
2025年 テーマ賃貸
  • このサイトについて

テーマ賃貸の失敗事例集|なぜ「良さそうな物件」が破綻するのか

Taro 2026年1月25日 0

カテゴリー

  • このサイトについて (1)
  • その他 (30)
  • トラブル対応 (9)
  • 不動産の知識 (27)
  • 判例解説 (21)
  • 空室対策 (24)
  • 管理会社 (28)
    • 関東地方の管理会社 (28)
      • 栃木県の管理会社 (15)
      • 群馬県の管理会社 (13)
  • 管理実務 (53)
  • 賃貸経営 (39)
  • 賃貸経営ニュース (26)

最近の投稿

  • 【判例解説】入居前キャンセルと賃貸借契約の成立時期(東京地判 平成29年4月11日)
  • テーマ賃貸・成功判断チェックリスト|始める前に必ず考えるべき実務と思考整理
  • 【判例解説】更新料不払いと賃貸借契約解除(東京地判 平成29年9月28日)
  • テーマ賃貸の失敗事例集|なぜ「良さそうな物件」が破綻するのか
  • 【判例解説】賃貸マンション建築における不当勧誘と説明義務違反(東京地判 平成28年10月14日)
  • DIY可・カスタマイズ型賃貸とは|「自由」を管理するという賃貸経営の選択
  • 【判例解説】クリーニング特約・礼金特約と消費者契約法10条(東京地判 令和2年10月7日)
  • お問い合わせ
  • このサイトについて
  • 利用規約 / プライバシーポリシー
Japanese