
はじめに
近年、賃貸ポータルサイトで見かけることが増えた「パノラマ画像(360°写真)」は、物件を立体的に見せる新しい情報提供手法として注目されています。室内をぐるりと見渡せるバーチャル体験は、写真だけでは伝わりにくい部屋の広さや雰囲気をリアルに感じ取れるのが特徴です。
この記事では、パノラマ画像がどのように空室対策に役立つのか、そして主要ポータルサイトでの掲載仕様について詳しく解説します。導入を検討しているオーナーや管理担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
パノラマ画像が空室対策になる理由
1. 入居希望者の「内見意欲」を高める
パノラマ画像は、室内を360度自由に見渡せるため、写真だけでは分からなかった奥行きや間取りの感覚をつかみやすくします。特にリビングの広さや採光、天井高などは、静止画よりも臨場感があり、内見への興味を喚起します。
結果として、閲覧から問い合わせへの転換率が上がり、反響数の増加につながります。LIFULL HOME’Sの社内分析でも、パノラマ画像付き物件は掲載初期1か月の反響が通常の1.5〜2倍に伸びる傾向があると報告されています。
2. 遠方・多忙層にも訴求できる
360°ビューは、現地に行かなくても室内を確認できる「オンライン内見」の役割を果たします。転勤や進学などで遠方から探している入居希望者にとって、現地確認の負担を大幅に軽減できる点が強みです。
このような利便性の高さにより、実際の内見前に候補を絞り込みやすくなり、申込までのスピードアップが期待できます。空室期間の短縮にも直結する実用的な効果です。
3. 掲載順位やクリック率が上がる
主要ポータルでは「パノラマ画像付き物件」を優先表示する傾向があります。たとえばLIFULL HOME’Sでは「VR内見可」アイコンが付き、検索結果画面でも目立つ仕様です。視覚的な差別化によってクリック率(CTR)が向上し、閲覧数の増加につながります。
4. 管理会社・オーナーの信頼性向上
高品質なパノラマ画像は、物件の魅力を伝えるだけでなく、管理の丁寧さや運営体制の信頼性を示すツールにもなります。実際の物件をそのまま見せる透明性が、入居希望者に「誠実な募集」という印象を与えます。
5. コストパフォーマンスが高い
360°カメラを使えば1部屋あたり数千円〜1万円程度で撮影可能です。一度撮影した画像は再募集時や複数ポータルで使い回せるため、長期的に見ると費用対効果が高い施策といえます。
主要ポータル別アップロード仕様比較
パノラマ画像を導入する際は、各ポータルサイトの対応フォーマットや登録方法を理解しておくことが重要です。以下の表では、2025年時点の主要3サイト(LIFULL HOME’S、SUUMO、アットホーム)の仕様を比較しています。
| 項目 | LIFULL HOME’S | SUUMO | アットホーム |
|---|---|---|---|
| 呼称 | VR内見・パノラマ画像 | 360°パノラマ画像 | バーチャル内見(パノラマムービー) |
| 対応サービス | RICOH THETA 360.biz、LIFULL VR | SUUMO CMS(専用ビューワー) | atVR(アットホームVR)またはTHETA360.biz |
| 対応フォーマット | JPEG(equirectangular)形式 | JPEG(6000×3000px推奨) | JPEGまたはMP4(静止・動画形式) |
| 推奨機材 | RICOH THETAシリーズ | THETA・Insta360など | THETA・Insta360・撮影代行可 |
| アップロード方法 | 管理画面またはAPI連携 | SUUMO管理画面・一括入稿 | アットホームBMSまたはVR連携 |
| 掲載位置 | 物件詳細ページ上部に「VR内見」表示 | 間取・画像一覧に「360°」アイコン | 画像ギャラリー内に「パノラマ」ボタン |
| スマホ対応 | ジャイロ操作対応 | 同左 | 同左 |
| 特徴 | 無料利用プランあり | 静止画併用でCTR上昇 | 撮影代行サービス(有料) |
どのポータルもRICOH THETAシリーズに最適化されており、操作方法は共通しています。特にLIFULL HOME’Sは公式に360.bizとAPI連携しているため、登録・管理の手間が少なく、初めて導入する場合に適しています。
まとめ
パノラマ画像は、物件の魅力を「視覚体験」として届ける新しい募集手法です。入居希望者の印象を高め、遠方層へのアプローチや空室期間の短縮に効果があります。導入コストも抑えられるため、今後の標準施策として積極的に取り入れる価値があります。
まだ導入していない場合は、まず1〜2物件で試験的に撮影し、反響の変化を確認するとよいでしょう。継続的な運用により、確実な差別化と安定した入居促進が期待できます。
用語紹介
- パノラマ画像
- 360度全方位を一枚に収めた画像で、視点を動かして室内を見渡せます。
- VR内見
- パノラマ画像を活用してオンライン上で室内を確認する仕組みを指します。
- RICOH THETA
- 不動産業界で広く使われている360°カメラのシリーズです。
- 空室対策
- 賃貸物件の入居率を高めるための募集・宣伝・改善施策の総称です。