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【判例解説】入居前キャンセルと賃貸借契約の成立時期(東京地判 平成29年4月11日)

Taro 2026年1月26日

本件は、賃貸借契約書に署名押印した後、入居日未確定や鍵未引渡しを理由に、賃借人が「契約はまだ成立していない」と主張し、支払済み金員の返還を求めた事案です。裁判所は、賃貸借契約は諾成契約であり、契約書への署名押印時点で成立しているとして、賃借人の請求を退けました。

  • 裁判所・日付:東京地方裁判所 平成29年4月11日判決
  • 事件類型:賃貸借契約の成立時期・入居前解約をめぐる返還請求
  • 結論:契約成立を認め、賃借人の請求を棄却

※事件番号は裁判所名・判決日で特定しています。

事案の概要

賃借人は、マンションの一室について仲介業者を通じて入居申込みを行い、その後、賃貸人との間で賃貸借契約書に署名押印しました。あわせて、敷金・礼金・前払賃料・仲介手数料など、合計20万円超の契約金を支払いました。

もっとも、入居日は具体的に確定しておらず、鍵の引渡しも受けていなかったことから、賃借人は後日「まだ入居していない以上、契約は成立していない」として契約を撤回し、支払済み金員の返還を求めました。

賃借人は、その根拠として、①火災保険が未加入であったこと、②入居日が未定であったこと、③鍵を受領していなかったこと、④室内清掃や補修が未了であったことを挙げました。これに対し賃貸人は、賃貸借契約は既に成立しているとして返還に応じず、訴訟となりました。

判決の要旨

  1. 賃貸借契約の成立時期:賃貸借契約は諾成契約であり、当事者が契約内容に合意し、契約書に署名押印した時点で成立する。
  2. 賃借人の主張の排斥:保険未加入、入居日未確定、鍵未引渡し、清掃未了といった事情は、あくまで契約の「履行(実行)」に関する事項であり、契約の「成立」を左右するものではない。
  3. 当事者の行動の評価:賃借人自身が「解約合意書」を送付していることからも、賃借人が契約成立を前提に行動していたことがうかがえる。
  4. 入居前解約の法的評価:賃貸借契約は既に成立している以上、入居前であっても、契約の解消は「キャンセル」ではなく、契約に基づく解約として処理される。

位置づけと実務上のポイント

1. 「申込」と「契約」は明確に別物

実務上、最も誤解が多いのが、入居申込みと契約締結の混同です。入居申込書の段階であれば、原則としてキャンセルは可能ですが、賃貸借契約書への署名押印は、その一線を明確に越える行為です。本判決は、この境界線を明確に示しています。

2. 「キャンセル」という言葉は使わない

法的には「入居前キャンセル」という概念は存在しません。契約成立後は、正しくは「入居前解約」です。この言葉の使い分けを徹底することが、トラブル防止に直結します。

3. 民法改正(2020年)との整合性

2020年4月施行の民法改正により、賃貸借契約は物の引渡しを要しない諾成契約(民法601条)であることが条文上も明確になりました。本判決の考え方は、現行法の下でも揺るぎないものといえます。

4. 仲介手数料・初期費用の扱い

本件では、契約が有効に成立している以上、仲介業者の媒介業務も完了したと評価されます。そのため、入居前であっても仲介手数料の返還義務は原則として生じません。一方、敷金などの預り金や、提供されていないサービスに対応する費用は、精算対象となります。

まとめ

東京地判平成29年4月11日判決は、賃貸借契約が「諾成契約」であることを前提に、契約書への署名押印時点で契約は成立するという基本原則を明確にしました。入居前であっても、契約成立後は「キャンセル」ではなく「解約」として処理されるという点は、仲介・管理実務における極めて重要な指針となります。

用語紹介

諾成契約
当事者の意思表示の合致のみで成立する契約。賃貸借契約はこれに当たり、物の引渡しは成立要件ではない。
要物契約
契約成立のために、目的物の引渡しが必要とされる契約。賃貸借契約は要物契約ではない。
入居前解約
賃貸借契約成立後、実際に入居する前に行われる解約。
契約成立
契約内容について当事者の合意が確定した状態。通常は契約書への署名押印時点で認められる。

出所

  • 東京地判 平成29年4月11日(賃貸借契約の成立時期)

※判決本文は裁判所の裁判例検索や各種判例データベースでの確認を推奨します。


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著者について

Taro

Administrator

首都圏在住。管理会社に勤務し、賃貸管理業に従事しています。 事業主側で不動産売買と収益物件の管理を経験し、その後、現在の管理会社に転身しました。 保有資格: 宅地建物取引士 賃貸不動産経営管理士

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Name:Taro

首都圏在住。管理会社に勤務し、賃貸管理業に従事しています。
事業主側で不動産売買と収益物件の管理を経験し、その後、現在の管理会社に転身しました。

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