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原状回復のQ&A:契約・特約・説明責任に関する実務対応

Taro 2026年1月8日 1 分読み取り

目次

  1. 概要
  2. 結論
  3. Q&A(契約・特約・説明責任)
  4. Q9.「とても綺麗に使ったのに、クリーニング費用は本当に必要ですか?」
  5. Q10.「契約書に書いてあれば、どんな費用でも借主負担になるのですか?」
  6. Q11.「契約書にサインしているのに、『そんな説明は聞いていない』と言われたら?」
  7. Q12.「重要事項説明で説明していれば、原状回復の説明として十分ですか?」
  8. Q13.「原状回復の説明をした証拠が、どうしても残っていない場合はどう対応すべきですか?」
  9. Q14.「原状回復の説明は、どこまで具体的に行う必要がありますか?」
  10. Q15.「原状回復の説明は、口頭だけで行っていれば十分ですか?」
  11. Q16.「退去立会いを拒否された場合、原状回復の請求はできないのですか?」
  12. Q17.「敷金を超える原状回復費用を請求してもいいのですか?」
  13. まとめ
  14. 用語紹介

概要

このページは、原状回復の精算で特に揉めやすい「契約」「特約」「説明責任」をテーマに、実務での整理軸をQ&A形式でまとめたものです。原状回復は“交渉”ではなく“算定”ですが、算定を支えるのは契約条項の設計と、入退去時の説明・証拠の積み上げです。本カテゴリでは、クリーニング費用の扱い、特約の有効性、説明不足や手続き不備が引き起こすリスク、そして敷金を超える請求の考え方まで、実務者が押さえるべき論点を整理します。

Q&A(契約・特約・説明責任)

Q9.「とても綺麗に使ったのに、クリーニング費用は本当に必要ですか?」

【考え方の軸:募集品質の担保と責任の明確化】

この質問で整理すべきポイントは、「借主が綺麗に使ったという主観」と「次の入居者に対して、管理会社として品質を保証する責任」を分けて考えることです。ハウスクリーニング費用は、汚れに対するペナルティではなく、物件の衛生環境を一度リセットし、募集品質を担保するための不可欠な管理工程です。

  • プロ清掃と素人清掃の決定的な違い
    専門業者によるクリーニングは、単なる拭き掃除ではありません。換気扇の分解洗浄、排水トラップの洗浄・殺菌、水回りの水垢除去、エアコンフィルター清掃など、素人では手が届きにくい箇所まで含めた衛生管理を行います。これらを完遂して初めて、次の入居者から「汚い」「臭う」といったクレームを受けない状態、いわゆる募集品質が整います。
  • 責任の所在の明確化
    借主自身の清掃で済ませてしまうと、入居直後に設備の汚れや臭いに関するクレームが出た際、その原因が「前入居者の清掃不足」なのか「管理側の確認不足」なのかが曖昧になります。管理会社指定の業者が施工することで、清掃品質に対する責任の所在を明確にし、後日のトラブルを防いでいます。
  • 特約の正当な履行
    「退去時のハウスクリーニング費用は借主負担」とする特約は、こうした募集品質の担保を目的として設けられるものです。特約の内容が具体的であり、契約時に十分な説明と合意がなされている以上、実際の使用状況(綺麗さ)にかかわらず、契約どおり全額請求するのが管理実務上の適切な判断です。

実務上のポイントは、「綺麗に使っていただいたからこそ、次の方にも同じ水準でお部屋を引き渡したい」という管理側の誠実な姿勢をベースに説明することです。契約時の説明記録(重要事項説明書や特約の署名箇所)を示しながら、「これは掃除代ではなく、次の募集に向けた『衛生管理の保証』としての費用です」と伝えることで、借主の納得感を得やすくなります。


Q10.「契約書に書いてあれば、どんな原状回復特約でも有効なのですか?」

【考え方の軸:特約は「有効性の条件」を満たして初めて効力を持つ。形式的な記載よりも、合意の質が問われる】

この質問で最も重要なのは、「契約書に記載がある=無条件に有効」という理解は非常に危険であるという点です。原状回復に関する特約は、ガイドラインの原則を修正する強い効力を持つ一方で、裁判例や消費者契約法の観点から、その有効性が厳格にチェックされる分野でもあります。

  • 特約が有効と認められるための「3つのハードル」
    判例(最高裁判決等)を踏まえると、原状回復特約が有効と判断されるためには、一般的に次の条件を満たす必要があります。
    1. 具体性:負担する項目(クリーニング費、エアコン清掃費など)や金額、算定方法が具体的に明記されていること。
    2. 合理性:暴利的ではなく、社会通念上、借主が受け入れ可能な範囲の合理的な負担であること。
    3. 認識と合意:借主が「本来は負担しなくてよい通常損耗を、特約によってあえて負担する」というリスクを明確に認識し、自由な意思で合意していること。
  • 「消費者契約法」という大きな枠組み
    契約書に記載があっても、借主(消費者)の利益を一方的に害する不当な条項は、消費者契約法により無効とされる場合があります。「原状回復費用はすべて借主負担」といった、負担範囲が予測できない包括的な特約は、この観点からもリスクが高いと言えます。
  • 説明プロセスが特約を「生きた条文」にする
    特約の有効性を最終的に左右するのは、条文そのもの以上に「合意形成のプロセス」です。重要事項説明での口頭説明、質疑応答の機会、借主が理解したことを示す署名やチェックなど、そのプロセスが記録として残っていれば、特約は法的な紛争にも耐えうる強度を持ちます。

実務上の説明では、「特約は単なる文字の羅列ではなく、お客様と交わした大切な約束事です。具体的に何に対して、どのような費用をご負担いただくのかを事前にご説明し、ご納得いただいた上で契約を結んでいます」と伝えるのが有効です。条文の存在に頼るのではなく、丁寧な説明の積み重ねこそが特約を守るという意識が、安定した賃貸管理には不可欠です。


Q11.「契約書にサインしているのに、『そんな説明は聞いていない』と言われたら?」

【考え方の軸:署名は「合意の形式」に過ぎず、実質的な「説明責任」を免除するものではない】

この場面で実務者が持つべき視点は、「署名があること」と「内容を理解・納得していること」は、法的に必ずしもイコールではないという点です。特に原状回復特約のように借主に負担を課す条項については、単なる署名の有無以上に、実質的な合意形成のプロセスが厳しく問われます。

  • 裁判所が重視する「認識可能性」
    判例では、契約書にサインがあっても、「文字が極端に小さい」「専門用語ばかりで理解が難しい」「説明時に読み飛ばされた」といった事情があれば、その特約を無効と判断する傾向があります。重要なのは、借主がその負担内容を具体的に予見し、自分の意思で受け入れたと言えるかどうか、という点です。
  • 「説明の足跡」を多層的に残す
    「説明した」「聞いていない」という水掛け論を防ぐためには、署名以外の客観的な証拠(エビデンス)を積み重ねることが不可欠です。
    • 重要事項説明書への明確な記載と口頭での補足説明
    • 特約条項の直後に設けた「内容を確認しました」という個別チェックや記名
    • 図解や精算シミュレーションなど、理解を助ける補足資料の提示
    こうした複数の「説明の足跡」が残っていることで、署名は初めて強い証拠能力を持ちます。
  • 「理解を助ける姿勢」そのものが最大の防御になる
    「契約書を読まない方が悪い」と突き放す姿勢は、かえって借主の反発を招き、紛争を深刻化させがちです。実務では、「ここは特に大切なご負担のお話ですので、少し詳しく説明しますね」と一言添える、その誠実な対応のプロセス自体を記録に残しておくことが、結果として会社と担当者を守ることにつながります。

実務上の説明では、「署名という形式だけでなく、契約時に資料を用いて具体的にご説明し、ご質問がないことを確認した上で手続きを進めています」と、当時の説明プロセスを事実として振り返るのが効果的です。署名という「点」ではなく、説明という「線」で対応を裏付けることで、不当な「聞いていない」という主張を冷静に退けることができます。


Q12.「重要事項説明で説明していれば、原状回復の説明として十分ですか?」

【考え方の軸:重要事項説明は「業法上の義務」。実務では「民事上の合意」を成立させるための+αが問われる】

この質問で押さえておくべきポイントは、重要事項説明(重説)はあくまで宅建業法上の「最低ライン」であり、原状回復特約の有効性を担保する「ゴール」ではないという点です。特に借主に通常損耗の負担を課す特約については、重説で触れたという形式的な事実以上に、その説明の「質」が裁判等でも厳しく問われます。

  • 「形式的説明」と「実質的合意」のギャップ
    重説は説明項目が多岐にわたるため、原状回復に関する特約が「その他」の事項として埋没しがちです。裁判例では、膨大な説明の中の一項目として事務的に読み上げただけでは、借主がその不利益性を十分に認識して合意したとは認められないリスクがあります。
  • 有効性を高める「強調」と「明確化」
    特約を有効に機能させるためには、重説の中でも特に「通常損耗であっても、この項目についてはお客様のご負担になります」と、ガイドラインの原則を修正する内容であることを明示的に強調する必要があります。図解や金額の目安を示すなど、借主が負担の重さを具体的に予見できる状況を整えることが重要です。
  • 「二重の確認プロセス」が実務の標準
    実務上は、重説での法的説明に加え、賃貸借契約の締結時にも「改めての確認」として、特に重要な負担項目を再説明するプロセスを設けるべきです。この重ねて説明した事実を記録として残すことが、後日の「理解していなかった」という主張を封じる最大の防御になります。

実務上の説明では、「重要事項説明は法令に基づく手続きですが、弊社ではそれ以上に、お客様に納得感を持ってご入居いただくことを大切にしています」と伝え、特に負担の大きい項目については重点的に時間を割く姿勢を示しましょう。「手続きとしての説明」を「合意のための対話」に昇華させることが、将来のトラブルを最小限に抑える秘訣です。


Q13.「原状回復の説明をした証拠が、どうしても残っていない場合はどう対応すべきですか?」

【考え方の軸:過去の記録不足を、現在の「契約の合理性」と「客観的事実」で補完し、再構築する】

このケースで重要なのは、「当時の記録がない=請求を諦める」と短絡的に考えないことです。説明記録の不足は確かにマイナス要因ですが、実務では「契約条項の具体性」「現在の汚損状況(事実)」「ガイドラインに沿った算定」の三点を揃えることで、請求の正当性を十分に再構築できます。

  • 契約書という「最大の証拠」に立ち返る
    説明時のメモや録音が残っていなくても、署名・捺印のある賃貸借契約書そのものが、当事者間の合意を示す最も強力な証拠です。特約の内容が具体的で、負担範囲や算定根拠が明確であれば、裁判例においても「署名した以上、その内容を認識していた」と推定される可能性は十分にあります。
  • 「説明不足」を「算定の合理性」でカバーする
    説明記録が乏しい場合ほど、精算内容はガイドラインに厳格に沿わせる必要があります。経年劣化を適切に考慮した一面単位での貼り替えや、過大にならない工事範囲の設定など、誰が見ても「社会通念上、妥当な請求である」と説明できる構成にすることで、借主の主張に対抗しやすくなります。
  • 精算プロセスでの「丁寧な再合意」
    過去の説明不足そのものを争点にするのではなく、「今回の退去時の状態」と「契約書の該当条文」に基づき、改めて算定根拠を説明します。現在の事実関係をベースに、再度合意形成を図る姿勢が、紛争の長期化を防ぎ、現実的な着地点につながります。

実務上の説明では、「当時の詳細な説明記録までは残っておりませんが、契約書に明記されている通り、この項目はお客様のご負担となっております。今回の算定も、ガイドラインに基づき経年劣化を十分に考慮した内容です」と、請求内容の透明性と誠実さを前面に出すのが効果的です。過去を悔やむよりも、現在のロジックを磨くことが、最善の防御になります。


Q14.「原状回復の説明は、どこまで具体的に行う必要がありますか?」

【考え方の軸:すべてを説明する「量」よりも、負担の境界線を理解させる「質(具体性)」を重視する】

この質問で実務者が押さえるべきなのは、原状回復の説明は網羅性ではなく、「不利益が発生するポイントを具体的に伝えているか」が重視されるという点です。数多くの汚損パターンをすべて説明することは現実的ではありませんが、借主にとって負担となり得る特約や、過失と判断される境界線については、抽象論だけでは足りません。

  • 「日常生活に即した具体例」を用いる
    「通常損耗以外は借主負担です」といった原則論に加え、「結露を放置してカビを発生させた場合」「家具の移動時に床を傷つけた場合」「換気扇の油汚れを長期間放置し固着させた場合」など、借主が自身の生活を思い浮かべられる具体例を示すことが重要です。具体例があることで、負担の境界線が現実的に理解されます。
  • 「算定のルール」という共通認識を持たせる
    契約時点で正確な金額を確定させる必要はありませんが、「クロスは原則として一面単位で算出する」「ハウスクリーニング費用は専有面積に応じた定額制である」といった計算の考え方は事前に共有しておくべきです。これにより、退去時に「算定方法が不透明だ」という不信感を生みにくくなります。
  • 高額になりやすいリスクを優先して説明する
    数千円で済む可能性のある項目と、数十万円規模になり得る項目では、説明の重み付けを変える必要があります。特に室内喫煙、ペット飼育、水回りの腐食や漏水放置など、原状回復費用が大きくなりやすい事項については、理解を確認しながら重点的に説明する姿勢が、後日の紛争を大きく減らします。

実務上の説明では、「すべてのケースを網羅することはできませんが、退去時にトラブルになりやすい『注意していただきたいポイント』に絞ってご説明します」と前置きするのが有効です。完璧な説明の羅列を目指すよりも、記憶に残る要点を押さえることこそが、実効性のある説明責任の果たし方と言えます。


Q15.「原状回復の説明は、口頭だけで行っていれば十分ですか?」

【考え方の軸:口頭は「理解」を促し、書面は「証拠」を固定する。再現性のない説明は、実務上存在しないのと同じである】

この問いで実務者が肝に銘じておくべきなのは、「その場で伝わったか(口頭)」よりも「後から証明できるか(書面)」が管理実務の成否を分けるという現実です。数年後の退去時に「言った・言わない」の争いへ発展させないためには、説明内容を物理的に残す「証拠化のプロセス」が不可欠です。

  • 記憶は風化し、都合よく書き換えられる
    契約時にどれだけ丁寧に説明しても、入居期間が数年に及べば借主の記憶は必ず曖昧になります。退去時に不利な請求を提示された場面では、人は無意識に自分に都合の悪い情報を「聞いていない」と処理しがちです。口頭説明のみでは、この心理的プロセスに対抗できません。
  • 資料による「説明の可視化」
    原状回復に関する負担区分や特約内容は、契約書などの正式書面に加え、視覚的な補足資料(負担区分の早見表、図解、精算事例)を併用すべきです。特に「通常損耗(貸主負担)」と「過失・善管注意義務違反(借主負担)」の境界を示した資料は、退去時に当時の説明をそのまま再現できる有力な根拠になります。
  • 「説明プロセス」を署名や履歴で固定する
    資料を渡すだけで終わらせず、「この内容について説明を受け、理解しました」というチェックや署名、説明日を記録として残すことで、説明責任の履行が客観的事実になります。この「証拠の足跡」があることで、後日の「知らなかった」という主張の説得力を大きく削ぐことができます。

実務上は、「口頭で要点をお伝えし、詳細はこの資料にまとめています。後から見返せるよう保管をお願いします」と一言添えるのが効果的です。説明を一過性の会話で終わらせず、いつでも再生可能な『客観的な事実』として残すことが、原状回復トラブルを最小限に抑える最大のポイントです。


Q16.「退去立会いを拒否された場合、原状回復の請求はできないのですか?」

【考え方の軸:立会いは紛争予防の「協議」であり、請求の「要件」ではない。客観的記録があれば、不在時でも請求は成立する】

この場面で実務者がまず整理すべきなのは、退去立会いはあくまで任意の手続きであり、立会いが行われなかったからといって原状回復義務が免除されるわけではないという点です。立会いはその場での認識共有を助ける手段に過ぎず、請求の根拠はあくまで「契約内容」と「退去時の室内状況という事実」にあります。

  • 立会いの有無より「占有の解除」が重要
    原状回復実務において法的に重要なのは、立会いの有無ではなく、借主から貸主へ鍵が返還され、占有が解除された(明け渡しが完了した)という事実です。鍵の返却を受けた時点で、管理会社は室内を確認し、損耗や汚損の内容を確定させる正当な権限を有します。
  • 不在時こそ「証拠の鮮度と密度」が問われる
    立会いがない場合、借主から「自分が出た後についた傷ではないか」と反論されるリスクが高まります。これを防ぐには、鍵受領直後に撮影を行うなど、撮影時点が明確な写真・動画記録を残すことが不可欠です。全体を網羅した撮影に加え、損傷箇所にはメジャーを当てるなど、第三者が見ても状況を即座に理解できる記録の密度が、立会いに代わる説得力となります。
  • 「一方的判断」に見せないための事前設計
    実務上は、立会い拒否や日程不調を想定したルールを、退去案内等で事前に明示しておくことが重要です。「期日までに立会い調整がつかない場合は、弊社にて確認・記録のうえ精算します」とあらかじめ示しておくことで、事後の「勝手に決められた」という感情的な反発を抑制できます。

実務上の説明では、「立会いは確認の機会としてご用意しておりますが、ご不在の場合でも、鍵返却時点の状態を厳正に記録したうえで精算いたします」と冷静に伝えるのが有効です。立会いという形式に固執せず、記録という客観的事実で判断する姿勢が、迅速かつ公正な明け渡し精算につながります。


Q17.「敷金を超える原状回復費用を請求してもいいのですか?」

【考え方の軸:敷金は「上限」ではなく「担保」。原状回復費用は敷金の額とは独立して発生する】

この質問でまず整理すべきなのは、敷金と原状回復費用は法的にも実務的にも別の概念だという点です。敷金は、賃料不払いなどを含む債務全般を担保するために預かるものであり、原状回復費用の「上限額」や「定額精算」を意味するものではありません。

  • 敷金の役割は「預り金(デポジット)」
    敷金は、退去時に確定した債務を清算するための担保として機能します。
    • 原状回復費用 < 敷金:差額を借主へ返還
    • 原状回復費用 > 敷金:不足分を借主へ追加請求
    このように、支払義務の有無や金額は「敷金」ではなく、「実際に発生した原状回復費用」によって決まります。
  • 「敷金ゼロ・少額契約」でも義務は消えない
    近年増えている敷金ゼロ物件であっても、原状回復義務が免除されるわけではありません。敷金がない、あるいは少額であることは、単に「事前に預けている担保がない」という意味に過ぎず、退去時に発生した汚損・毀損に対する支払義務は通常通り発生します。
  • 超過請求で問われるのは「金額」ではなく「算定の妥当性」
    敷金を超える請求が争点になる場合、問題視されるのは金額の大小ではなく、その算定プロセスが合理的かどうかです。ガイドラインに基づく経過年数の考慮、汚損範囲に限定した修繕内容など、最小限かつ公平な算定であることを説明できれば、敷金超過請求であっても正当性は十分に認められます。

実務上の説明では、「敷金は修繕費用の定額料金ではなく、あくまで保証金のような位置づけです。今回の原状回復費用は、契約内容とガイドラインに基づいて算出した結果、敷金を上回りましたので、不足分をご請求しています」と、会計処理として淡々と説明するのが有効です。金額そのものではなく、算出の根拠と手順に軸足を置くことで、感情的な対立を避けやすくなります。


結論

  • 請求の強度は「契約条項の明確さ」×「説明の記録」×「入退去の証拠」で決まります。
  • 特約は万能ではなく、合理性・明確性・説明状況によって有効性が左右されます。
  • 「一式」や根拠不明の請求は争点化しやすいため、項目・範囲・算定根拠を見える形で提示します。
  • 敷金は上限ではなく担保であり、費用が敷金を超える場合も、算定の妥当性と透明性があれば請求の正当性は維持できます。

まとめ

契約・特約・説明責任の論点は、「借主に負担させたいか」ではなく「負担させられる状態(根拠と手続き)が整っているか」で結論が決まります。特約は、内容が明確で合理的であり、入居者が理解できる形で提示・説明されて初めて強い根拠になります。請求時は、金額の大小ではなく、算定プロセスと証拠の提示によって納得感を設計することが、紛争予防と回収確度の両方に直結します。

用語紹介

通常損耗
通常の使用により自然に生じる傷みや劣化を指します。借主の過失や管理不足によらない変化であれば、原則として貸主負担として整理されます。
善管注意義務
借主が借りた物件を、社会通念上求められる注意を払って使用・管理する義務を指します。放置や不適切な使用により損耗が拡大した場合、借主負担の根拠となります。
特約
賃貸借契約において当事者が個別に合意した追加条項を指します。有効性は「内容の明確性」「合理性」「説明・合意のプロセス」に左右されます。
説明責任
契約内容や費用負担の前提を、借主が理解できる形で示し、合意に至った過程を記録できる状態にすることです。重要事項説明書、契約書の明示、チェックリスト、メール等の履歴が実務上の根拠になります。
敷金
未払賃料や原状回復費用など、賃貸借契約から生じる借主の金銭債務を担保するために預かる金銭です。原状回復費用の「上限」ではなく、精算の結果、費用が敷金を超えれば不足分請求が発生します。

著者について

Taro

Administrator

首都圏在住。管理会社に勤務し、賃貸管理業に従事しています。 事業主側で不動産売買と収益物件の管理を経験し、その後、現在の管理会社に転身しました。 保有資格: 宅地建物取引士 賃貸不動産経営管理士

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Name:Taro

首都圏在住。管理会社に勤務し、賃貸管理業に従事しています。
事業主側で不動産売買と収益物件の管理を経験し、その後、現在の管理会社に転身しました。

保有資格:
宅地建物取引士
賃貸不動産経営管理士

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