
はじめに
賃貸住宅におけるインターネット設備は、入居者の選択基準として非常に重要になっています。最近は「無料インターネット」や「高速Wi-Fi」対応が空室対策の決め手になるケースも増えています。ここでは、賃貸物件で一般的に利用されるインターネット接続方式と、それぞれのメリット・デメリットを整理します。
光回線(FTTH:Fiber to the Home)
光ファイバーを建物まで引き込み、各住戸まで配線する方式。現在最も主流であり、将来性の高い接続方法です。
- メリット:高速・大容量通信(1Gbps~最大10Gbpsプランも)、上り下りともに安定、在宅勤務や動画配信・オンラインゲームに最適、長期的な需要が見込める。
- デメリット:初期工事費用が高い、建物構造によっては配線が難しい場合がある、工事期間が長くなることもある。
VDSL方式(電話線利用)
マンション共用部までは光ファイバーを引き込み、そこから各住戸までは既存の電話線(メタル線)を利用する方式です。
- メリット:既存の電話配線を利用するため導入コストを抑えやすい、工事が比較的短期間で済む。
- デメリット:速度が最大100Mbps程度と光回線より遅い、距離や配線状態によって速度が低下、テレワークなど高速通信ニーズには不向き。
ケーブルテレビ回線(CATV)
テレビ用の同軸ケーブルを利用してインターネットを提供する方式。地域密着のCATV事業者が展開しています。
- メリット:既存のテレビ配線を利用できるため導入が容易、テレビサービスとセット契約が可能、地域によっては安価なプランもある。
- デメリット:上り(アップロード)が遅くテレワークや配信には不向き、利用者が多い時間帯は速度が低下しやすい、光回線に比べ将来性に不安。
無線系(モバイル回線・ホームルーター)
携帯電話回線(4G/5G)を利用してインターネット接続を行う方式。最近はホームルーター型が普及しています。
- メリット:工事不要、コンセントに挿すだけで利用可能、引越しや短期利用に向いている、5G対応なら下り数百Mbps以上も期待できる。
- デメリット:通信環境に左右される(エリア・建物構造・混雑)、通信量に上限がある場合が多い、安定性は有線回線に劣る。
LAN配線(Ethernet方式)
建物の施工段階で各住戸にLANケーブルを直接敷設する方式。新築マンションで増えています。
- メリット:専用配線のため安定性が高い、光回線と組み合わせれば高速・安定通信が可能、有線接続が基本なので遅延が少ない。
- デメリット:建築段階での配線工事が必要、既存物件に後付けする場合は費用が高額、配線方式によっては柔軟な変更が難しい。
まとめ
最も安定・高速な方法は光回線(全戸引込型 FTTH)、コスト重視や築古物件にはVDSL、テレビとセットで導入しやすいのはCATV、工事不要で短期利用向けはモバイル回線、そして新築で長期価値を高めるならLAN配線+光回線です。
賃貸経営で導入を検討する際は、物件の築年数・構造・ターゲット層(単身/ファミリー/在宅勤務ニーズ)に応じて費用対効果と将来性を見極めることが重要です。