
はじめに
賃貸住宅で入居者から寄せられる設備トラブルの中でも、「エアコンからポコポコ、ボコボコと水が流れるような音がする」という相談は少なくありません。
大きな故障ではないケースが多い一方で、原因や対応を誤るとクレームや二次トラブルにつながることもあります。
本記事では、賃貸オーナー・管理担当者向けに、この音が発生する仕組みと主な原因、現場での判断ポイント、さらにエアカットバルブ(逆止弁)を導入する際の注意点まで、実務ベースで整理します。
エアコンからポコポコ・ボコボコ音がする現象とは
問題となる音は、冷房運転中を中心に、室内機の内部や吹き出し口付近から聞こえることが一般的です。
多くの場合、水そのものが異常に流れているわけではなく、排水経路であるドレンホース内に空気が出入りすることで発生します。
異音が断続的で、冷房能力や運転自体に問題がない場合は、構造上起こりやすい現象と捉えることができます。
賃貸住宅で音が発生しやすい理由
賃貸住宅では、以下のような条件が重なり、ポコポコ音が出やすくなります。
- 気密性の高い建物構造
- ベランダ設置でドレンホースが長くなりがち
- 換気扇やレンジフードの常時使用
- 高層階や風の影響を受けやすい立地
これらの条件により室内外の気圧差が生じ、ドレンホースから空気が吸い込まれることで音が発生します。
主な原因と仕組み
ドレンホース内の空気逆流
最も多い原因が、ドレンホース内での空気逆流です。
本来、結露水は重力によって屋外へ排水されますが、気圧差が生じるとホース内に空気が入り込み、水と空気が混ざって音を立てます。
ドレンホースの軽度な詰まり
ホコリや小さなゴミ、虫などが溜まると排水が一時的に滞り、水が溜まっては流れる状態になります。
この繰り返しが、ボコボコという音として現れます。
換気設備による室内負圧
換気扇やレンジフードを使用すると室内が負圧になり、空気の逃げ場としてドレンホースが使われることがあります。
特に冬場や強風時に顕著です。
現場でまず確認したいチェックポイント
入居者から相談を受けた際、すぐに業者手配を行う前に、以下の点を確認すると原因の切り分けがしやすくなります。
- 窓を少し開けると音が止まるか
- ドレンホースの先端が潰れていないか
- ホース先端から排水が確認できるか
- 水漏れを伴っていないか
窓を開けて音が止まる場合は、気圧差が主因と判断できます。
エアカットバルブ(逆止弁)の効果と注意点
ポコポコ音対策として広く知られているのが、ドレンホースに取り付けるエアカットバルブ(逆止弁)です。
空気の逆流を防ぐ構造のため、気圧差による異音を抑える効果が期待できます。
一方で、賃貸住宅に設置する場合は注意も必要です。
エアカットバルブ内部にゴミや汚れが溜まると、排水不良を起こし、場合によっては結露水が室内側へ逆流するリスクがあります。
そのため、設置する場合は以下の点を前提条件とすることが重要です。
- 定期的な清掃・点検を行うこと
- 入居者任せにせず、管理側でメンテナンス方針を明確にすること
- 水漏れ発生時は速やかに取り外し・点検できる体制を取ること
異音対策として有効な反面、管理を怠ると別のトラブルを招く可能性がある設備である点は、必ず押さえておきたいポイントです。
管理会社・専門業者へ連絡すべきケース
以下の症状が確認できる場合は、放置せず管理会社や専門業者への対応が必要です。
- ポコポコ音に加えて水漏れが発生している
- 冷房の効きが明らかに悪い
- カビ臭や異臭が強くなっている
単なる音の問題ではなく、ドレン詰まりや内部汚れが進行している可能性があります。
まとめ
エアコンから聞こえるポコポコ・ボコボコ音は、賃貸住宅では比較的よくある現象です。
多くはドレンホースの空気逆流や気圧差が原因で、直ちに故障と判断する必要はありません。
ただし、エアカットバルブ(逆止弁)を含む対策を行う場合は、設置後の管理や清掃体制まで含めて判断することが重要です。
音だけでなく水漏れなどの兆候が見られる場合は、早めの専門対応がトラブル防止につながります。
用語紹介
- ドレンホース
- エアコン内部で発生した結露水を屋外へ排水するためのホースです。
- エアカットバルブ(逆止弁)
- ドレンホース内への空気逆流を防ぐ目的で設置される部品です。
- 室内負圧
- 換気などにより室内の気圧が外気より低くなる状態を指します。