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非常灯(非常用照明)が必要な建物・不要な建物は?設置基準と緩和の考え方

Taro 2026年2月21日 1 分読み取り
目次

  • はじめに:設置基準を知らないと「不要な非常灯」が残る
  • 非常用照明が必要になる建物・場所の全体像
  • 設置対象の基本:施行令126条の4をどう読むか(実務向け)
  • 開放廊下・屋外階段の落とし穴(階段室の閉鎖性に注意)
  • 緩和の代表例:告示1411号のポイント(歩行距離・30㎡以下)
  • 照度基準(2ルクス)とLED更新の注意点
  • 2階建て小規模アパートで“ハッとする”例外パターン
  • 管理会社の実務:不要な非常灯を減らすための進め方
  • まとめ
  • 用語紹介

はじめに:設置基準を知らないと「不要な非常灯」が残る

共用部の蛍光灯をLEDに切り替えるタイミングで、思わぬコスト増に直面しやすいのが「共用灯だと思ったら非常用照明(非常灯)だった」というケースです。非常用照明は、単に明るい照明ではなく、停電時の避難安全を確保するために法令上の要件に基づいて設置されます。

逆に言えば、本来は要件に当たらないのに「非常用照明として計画・管理されている」状態が残っていると、更新コストが膨らみます。この記事では、非常用照明の設置対象と緩和(免除)を判断するための考え方を、実務の視点で整理します。

一次情報:建築基準法施行令(e-Gov)

非常用照明が必要になる建物・場所の全体像

非常用照明は「共用廊下に必要/不要」と通路だけで決まりません。法令の構造は、ざっくり言うと次の流れです。

  • まず「対象となる居室(用途・規模・条件)」がある
  • その居室から地上へ通ずる「通路(廊下・階段等)」が対象になる
  • ただし書き・告示で、避難上支障がない場合の緩和がある

この「居室」と「通路」をセットで考える視点を持つと、2階建ての小規模アパートなどで判断がブレにくくなります。


設置対象の基本:施行令126条の4をどう読むか(実務向け)

施行令126条の4は、非常用照明を設けるべき「居室」と「通路」を定めています。現場では、次の3ステップで整理すると判断の筋道が立ちます。

ステップ1:居室側の「トリガー」を探す

まずは、建物内に「非常用照明の対象となり得る居室」があるかを確認します。共同住宅の住戸は、一般に住戸内へ非常用照明が入るケースは多くありませんが、建物の使われ方次第でトリガーが発生します。

アパートで典型的にハマるのが、1階に店舗・事務所が入る併用住宅です。住戸だけを見て「うちは住宅だから」と判断すると、店舗部分がトリガーになって共用部(避難経路)の扱いまで変わる可能性があります。

ステップ2:その居室から地上へ通ずる「通路」を整理する

居室がトリガーに当たる場合、そこから地上に至る廊下・階段等が対象になります。このとき、条文上は「採光上有効に直接外気に開放された通路」など、一定の通路が除外される整理が入ります。ここが実務上、最も揉めやすいポイントです。

ステップ3:ただし書き・告示(緩和)を当てはめる

施行令126条の4第4号は、国土交通大臣告示で「避難上支障がないもの」を具体化しています。代表例が告示1411号で、歩行距離や小規模居室などの条件が示されています。

一次情報:告示1411号(非常用の照明装置を設けることを要しない…)

開放廊下・屋外階段の落とし穴(階段室の閉鎖性に注意)

「廊下が外部開放だから共用部の非常用照明はいらない」と早合点すると危険です。条文のポイントは“屋外にあるか”ではなく、“採光上有効に直接外気に開放されているか”という要件です。

落とし穴1:廊下は開放でも、階段室が囲われている

廊下は外部に面していても、階段部分が壁で囲われていたり、階段室の一部に扉や防火シャッター等が設けられていたりすると、「開放」とは評価されにくくなります。結果として、階段(または階段室)には非常用照明が必要という判断になるケースがあります。

現場では「屋外階段だから大丈夫」と見た目で決めず、階段室の形状、囲い込み、出入口の扱いを図面と現況写真で押さえてください。

落とし穴2:法的に不要でも、図面・点検上は非常用照明として管理されている

大手ハウスメーカー施工物件などで、共用灯が一律に非常用照明として計画されていることがあります。この場合、法的な要否とは別に、確認図書・検査・点検の整合が崩れると、一般灯へ戻すのが難しくなります。


緩和の代表例:告示1411号のポイント(歩行距離・30㎡以下)

告示1411号は、施行令126条の4第4号がいう「避難上支障がないもの」を具体化する告示です。実務で重要なのは、緩和の主対象が「居室」である点です。居室が緩和されても、経路側の扱いは別途整理が必要になることがあります。

代表パターン1:歩行距離が短く、避難上支障がない居室

告示では、避難階(または直上階・直下階)等で、屋外避難階段に通ずる出入口までの歩行距離など、避難上の評価軸が示されています。個別物件では、図面上で歩行距離を根拠化できる形にしておくと、照会やオーナー説明が通りやすくなります。

代表パターン2:床面積30㎡以下の小規模居室

小規模居室(30㎡以下)について、地上への出口の有無や、地上まで通ずる部分の条件(非常用照明が設けられている、または採光上有効に外気に開放など)で緩和される整理が含まれます。ここも「居室免除」と「共用部(通路)まで不要」を混同しないのがポイントです。

一次情報:告示1411号(PDF) / 参考(技術的助言):非常用の照明装置の設置基準の見直しについて

照度基準(2ルクス)とLED更新の注意点

非常用照明は「点けばよい」ではなく、床面での照度確保が求められます。国土交通省の告示(構造方法)では、常温下の床面水平面照度について、1ルクス(ただし蛍光灯またはLEDランプを用いる場合は2ルクス)以上を確保する旨が示されています。

一次情報:非常用の照明装置の構造方法を定める件(PDF)

「同等数でLEDに替えるだけ」でも、安心とは限らない

古い物件では、当時の器具性能や設計前提が現在の運用実態とズレていることがあります。見た目の明るさだけで判断し、照度の根拠(計算・測定・メーカー資料)がないまま更新すると、後から説明に詰まります。

逆に、LED化は配光設計が合えば照度を確保しやすく、条件によっては器具台数の最適化につながる可能性もあります。ただし、台数削減は「合理化」ではなく「設計変更」に近い判断になるため、根拠を揃えて進めてください。


2階建て小規模アパートで“ハッとする”例外パターン

パターン1:1階に店舗・事務所が入る併用住宅

住戸だけの集合住宅だと思っていたら、1階のテナント部分がトリガーになり、共用廊下・階段の扱いまで影響することがあります。賃料構成の都合で「店舗が空室の期間」でも、用途としては店舗扱いが残る場合があるため、図面・用途の確定が先です。

パターン2:屋外階段でも、階段室が囲われている

外部階段のつもりでも、実際は壁に囲われていたり、出入口に建具・シャッターがあったりすると、開放通路の除外に当たらない可能性があります。階段室の閉鎖性は、廊下以上に要注意です。

パターン3:共用灯が全数「非常用照明扱い」で計画・点検されている

法的に不要になり得る条件があっても、確認図書や点検体系が非常用照明として組まれていると、一般灯への戻しは「器具更新」ではなく「扱い変更」になります。ここは根拠と手順を外すと、必ず後工程で詰まります。

管理会社の実務:不要な非常灯を減らすための進め方

「不要なら一般灯へ戻してコストを下げる」は合理的です。ただし勝ち筋は、現場感覚ではなく根拠の積み上げにあります。

1)図面は「電灯設備図」だけでなく「避難経路図」もセットで確認する

  • 確認申請図書・竣工図(電灯設備図、避難経路が分かる図、平面図)
  • 非常用照明として回路・器具が計画されているか
  • 居室側のトリガーと、共用部(通路)側の対象がどうつながっているか
  • 開放通路の判断に影響する囲い込み・建具・シャッター等があるか

2)12条点検(定期報告)で「指摘が残る」リスクを、オーナーに具体的に伝える

対象建物では、非常用照明は建築基準法に基づく定期報告制度の枠組みでチェックされます。もし不要な根拠が固まっていないのに撤去・一般灯化すると、報告で「不備」として残り、特定行政庁から是正を求められる可能性があります。

オーナーにとっては「役所からの指導」は、追加費用だけでなく、資産価値・対外的な信用にも響きやすいポイントです。コスト削減の提案ほど、手順と根拠を丁寧に示す方が結果的に近道になります。

一次情報:建築基準法に基づく定期報告制度(国交省)

3)判断が割れるときは「結論」ではなく「判断材料」を取りに行く

市区町村が「回答できない」となるのは、個別物件の確認図書や取扱いが前提だからです。照会では「一般灯にしてよいですか?」だけをぶつけるより、次の聞き方が前へ進みます。

  • 「当該通路(階段室を含む)が“採光上有効に直接外気に開放”に該当するか判断するために必要な資料は何か」
  • 「確認図書・定期報告上の整合を保つには、どう扱うのが適切か」

まとめ

非常用照明の設置基準は、共用部だけを見て判断できません。居室側のトリガーと地上へ通ずる経路をセットで整理し、さらにただし書き・告示(1411号)を当てはめる必要があります。

  • まず「対象居室があるか」を確認し、そこから地上へ通ずる通路を整理する
  • 開放廊下でも、階段室の囲い込み・建具・防火シャッター等で判断が変わり得る
  • 告示1411号は歩行距離や30㎡以下の居室などの緩和を示すが、通路側まで自動的に不要とは限らない
  • 12条点検(定期報告)で指摘が残ると、是正指導や二重コストにつながりやすい
  • 不要な非常灯を減らすなら、図面(電灯設備図+避難経路が分かる図)と記録で根拠を固め、照会は「判断材料」を取りに行く

次のアクションとしては、対象物件の図面(電灯設備図・避難経路が分かる図・平面図)と現況写真(廊下・階段室の開放性が分かるもの)を揃え、告示1411号の当てはめが検討できる状態にするのが現実的です。

用語紹介

特定行政庁
建築基準法に基づく建築行政を所管し、建築主事を置く都道府県知事または市町村長等を指します。
採光上有効に直接外気に開放された通路
採光の観点から外気に有効に開放されている通路を指します。
12条点検(定期報告制度)
建築基準法第12条に基づき建築物や建築設備等の状況を定期的に調査・検査し報告する制度を指します。
告示1411号
施行令126条の4第4号に基づき非常用照明を要しない居室等の条件を定めた告示を指します。

著者について

Taro

Administrator

首都圏在住。管理会社に勤務し、賃貸管理業に従事しています。 事業主側で不動産売買と収益物件の管理を経験し、その後、現在の管理会社に転身しました。 保有資格: 宅地建物取引士 賃貸不動産経営管理士

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