
はじめに
隣地の樹木が敷地内に枝を伸ばしたり、根を張ったりして困るケースは珍しくありません。落ち葉や果実の落下で清掃が大変になることもあります。こうした越境トラブルは感情的になりやすいため、法的根拠に基づいた冷静な対応が重要です。本記事では、枝・根・果実それぞれのパターンに分けて、具体的な対処方法を解説します。
隣地樹木の越境と法的対応
枝が越境している場合
隣の木の枝が自分の敷地に伸びている場合、まずは隣地所有者に切除を依頼します。民法第233条により、枝を勝手に切ることは原則として認められていません。ただし、所有者が適切な期間内に対応しない場合や、建物や人に危険が及ぶ緊急の状況では、自ら枝を切ることができます。
- 最初に話し合いで解決を試みる
- 写真で現状を記録しておく
- 所有者が対応しない場合や危険時は自力で切除可能
このルールは2023年の民法改正で明確化されました。越境枝の放置により被害が生じる前に、証拠を残しつつ適切に対応することが大切です。
根が越境している場合
枝とは異なり、根が自分の敷地に入り込んでいる場合は、民法第233条第1項により即座に切除できます。事前に隣地所有者へ連絡する必要はありません。根は構造物や配管に影響を与えることもあるため、見つけた段階で早めに除去しましょう。
果実や落ち葉が落下している場合
越境した枝から落ちた果実や落ち葉は、落下した時点で自分の土地の所有物となります(民法第239条第2項)。ただし、まだ枝についている果実は隣地の所有者のものです。実務上は、清掃の負担などを巡るトラブルが多いため、双方での協議や清掃分担を話し合うことが望ましいでしょう。
越境による損害が発生した場合
枝や根の越境によって建物が傷ついた、配管が破損したなどの損害がある場合は、民法第709条に基づいて損害賠償を請求できます。請求の際は、被害の状況を写真や修理見積書で記録し、発生日や経緯を明確にしておくことが重要です。
実務上の対応手順
- 現状を写真で記録する
- 隣地所有者に文書またはメールで連絡する
- 応じない場合は行政や弁護士に相談する
- 緊急時は自ら枝・根を切除しても可(法的根拠あり)
多くのトラブルは話し合いで解決できますが、感情的になりやすい事案です。冷静に事実と法律に基づいて進めることが、長期的な良好関係にもつながります。
まとめ
隣地の樹木が越境した場合、枝は原則として所有者に依頼して切ってもらう必要がありますが、根は自ら切除できます。果実や落ち葉の所有権や処理責任も法的に定められています。いずれの場合も、記録・連絡・協議の3ステップを守ることが重要です。トラブルが長引く場合は、自治体の法律相談や専門家への相談を検討しましょう。
用語紹介
- 越境(えっきょう)
- 枝や根が隣の土地に侵入している状態を指します。
- 民法第233条
- 竹木の枝や根が隣地に越境した場合の切除に関する規定です。
- 民法第239条
- 果実の所有権がどの段階で発生するかを定めた条文です。
- 民法第709条
- 他人に損害を与えた場合の不法行為による損害賠償責任を定めています。