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【判例解説】賃借申込の撤回と契約締結上の過失(札幌高判 令和元年9月3日)

Taro 2025年12月20日

本件は、店舗用建物の賃貸借をめぐり、賃借申込人が契約締結直前の段階で交渉を一方的に破棄したことについて、賃貸人から契約締結上の過失に基づく損害賠償請求が認められるかが争われた事案です。裁判所は、賃貸借契約自体の成立は否定したものの、交渉経過から賃貸人に合理的な期待を生じさせた以上、正当な理由なく交渉を破棄した行為は違法であるとして、損害賠償責任を認めました。

  • 裁判所・日付:札幌高等裁判所 令和元年9月3日判決
  • 事件類型:賃貸借契約締結上の過失に基づく損害賠償請求
  • 結論:賃貸借契約の成立は否定する一方、契約締結上の過失を認め損害賠償請求を認容

※事件番号は裁判所名・判決日で特定しています。

事案の概要

賃貸人は、自己所有の店舗用建物について、小売業者である賃借予定者から出店の申込みを受け、媒介業者を通じて賃貸条件の交渉を行っていました。両者は、契約期間や賃料、引渡時期など主要条件について協議を重ね、契約書案の内容も概ね固まる段階に至っていました。

賃貸人は、賃借予定者への引渡しに備え、営業中であった既存店舗の閉店準備や内装解体工事を進め、実際に工事業者と契約を締結しました。しかしその後、賃借予定者は社内方針の見直しを理由に賃料保証条項等の再協議を求め、最終的には交渉を打ち切り、賃借申込みを撤回しました。

これにより、賃貸人は内装解体工事の中止に伴う違約金等の損害を被ったとして、賃借予定者に対し損害賠償を請求しました。

判決の要旨

  1. 賃貸借契約の成立の有無:本件では、契約書への署名押印をもって意思表示とする合意があった以上、最終的な意思表示の合致はなく、賃貸借契約は成立していない。
  2. 契約締結上の過失の法理:契約締結過程においても信義誠実の原則は適用され、交渉が大詰めに至り、相手方において契約成立への合理的期待が生じた場合には、その期待は法的に保護される。
  3. 本件における期待の合理性:交渉期間が長期に及び、主要条件について合意が形成され、賃貸人が多額の準備行為に着手していたことから、賃貸人の契約成立への期待は合理的である。
  4. 正当理由の有無:賃借予定者が交渉を破棄した理由は、従前の合意内容を覆すものであり、正当な理由があるとは認められない。
  5. 結論:賃借予定者の行為は契約締結上の過失に該当し、賃貸人が被った解体工事契約解除に伴う損害について、損害賠償責任を負う。

位置づけと実務上のポイント

1. 「契約不成立」でも責任が生じる場面

本判決は、賃貸借契約そのものが成立していなくても、交渉段階における行為が契約締結上の過失として損害賠償責任を生じ得ることを明確にしました。

2. 判断の分かれ目となる要素

  • 交渉期間の長さと進捗状況
  • 主要契約条件についての合意の有無
  • 相手方が着手した準備行為の内容・規模
  • 交渉破棄の理由とその合理性

3. 賃貸実務への影響

特に事業用賃貸では、契約締結前に内装解体や立退き対応など多額の準備費用が発生することがあります。
本判決は、「最終契約前だから自由に撤回できる」とは限らないことを示し、申込段階での慎重な意思決定と説明責任の重要性を示しています。

まとめ

札幌高判令和元年9月3日判決は、賃借申込人が契約締結直前に交渉を破棄した場合であっても、相手方に合理的な契約成立期待を生じさせていれば、契約締結上の過失に基づく損害賠償責任を負うと判断した重要な事例です。賃貸借契約の交渉段階における信義則の適用範囲を示す点で、実務上の意義は大きいといえます。

用語紹介

契約締結上の過失
契約締結の準備・交渉段階において、信義則に反する行為により相手方に損害を与した場合に成立する損害賠償責任。
信義誠実の原則
契約当事者が互いに誠実に行動すべきとする民法上の基本原則。契約交渉段階にも適用される。
合理的期待
交渉経過から、相手方が契約成立を確実と信じることが社会通念上相当と評価される状態。
準備行為
契約成立を前提として行われる工事発注や店舗閉店等の行為。損害額算定の重要要素となる。

出所

  • 札幌高判 令和元年9月3日(賃借申込の撤回と契約締結上の過失)

※判決本文は裁判所の裁判例検索や各種判例データベースでの確認を推奨します。


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著者について

Taro

Administrator

首都圏在住。管理会社に勤務し、賃貸管理業に従事しています。 事業主側で不動産売買と収益物件の管理を経験し、その後、現在の管理会社に転身しました。 保有資格: 宅地建物取引士 賃貸不動産経営管理士

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Name:Taro

首都圏在住。管理会社に勤務し、賃貸管理業に従事しています。
事業主側で不動産売買と収益物件の管理を経験し、その後、現在の管理会社に転身しました。

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宅地建物取引士
賃貸不動産経営管理士

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