
はじめに
サウナ付き賃貸は、テーマ賃貸の中でも特に注目度が高いジャンルです。背景にはサウナブームがありますが、実務的に見ると、単なる流行ではなく「自宅でととのう生活」を求める一定層の需要が存在しています。
一方で、サウナは水・熱・電気を扱う設備であり、導入には他のテーマ賃貸とは異なるハードルがあります。本記事では、全国の実在事例を踏まえつつ、成立条件と注意点を整理します。
💡ポイント:サウナ付き賃貸は、企画力と同時に設備リテラシーが問われるテーマです。
なぜサウナ付き賃貸が注目されるのか
サウナ付き賃貸の魅力は、単に「サウナがある」ことではありません。入居者は、「心身を整える習慣を日常に組み込みたい」「自分の生活レベルを一段引き上げたい」という動機で物件を選びます。
これは、設備消費ではなくライフスタイルへの投資です。そのため、サウナ付き物件は相場より多少高い賃料でも納得されやすい傾向があります。
💡ポイント:サウナは“嗜好品”ではなく、“生活習慣”として訴求できる点が強みです。
事例①:Ma Cachette(東京都北区) — ほぼ全室サウナ付き賃貸マンション

物件概要:東京都北区田端に2025年8月入居募集開始予定の新築賃貸マンション Ma Cachette(マ・カシェット)。総戸数21戸のうち20戸に、屋内型の自宅用サウナ(MySauna BoxType)が標準設備として導入されています。
この物件は、日本国内において“ほぼ全室に専用サウナが標準装備”される賃貸住宅として話題になっています。また、サウナ設置における消防署の協議承認が出た初の賃貸事例として報じられました。
💡ポイント:専有部サウナを“標準設備”として扱った実例はまだ珍しく、他物件との差別化や高付加価値賃料設定の参考になります。
「ととのい」を左右する動線設計
サウナ愛好家にとって重要なのは、サウナ室の有無だけではありません。サウナ室を出てから、シャワー(水風呂)、そして休憩(外気浴)へと移る一連の動線がスムーズかどうかが、物件評価を大きく左右します。
動線に無理があると、「サウナはあるが使いにくい部屋」になり、満足度が下がります。
💡ポイント:サウナ付き賃貸の差別化は、設備よりも動線設計で決まります。
電気容量・消防法という現実的ハードル
実務で最も多くつまずくのが、電気と消防です。専有部サウナの場合、200Vの専用電源やアンペア数の増設が必要になるケースがほとんどです。
また、木造アパートや集合住宅では、内装制限、火災報知器の連動など、消防署との事前協議が不可欠です。ここを軽視すると、後から是正工事が発生するリスクがあります。
💡ポイント:サウナ導入は「設備工事」ではなく「インフラ設計」と捉える必要があります。
維持管理と原状回復の考え方
サウナは湿気・熱・汗を伴う設備です。木材の腐食、カビ、臭いの付着をどう防ぐかは、賃貸経営上の重要な論点です。
防水処理、十分な換気計画、そして入居者向けのメンテナンスガイドを用意することで、退去時の原状回復コストを抑えやすくなります。
💡ポイント:サウナ付き賃貸は、使い方まで設計して初めて成立します。
導入前の実務チェックリスト
- 200V電源・電気容量の確保は可能か
- 消防法・内装制限について事前協議を行ったか
- サウナ→シャワー→休憩の動線は無理がないか
- 木材交換・特殊清掃などの将来コストを賃料に織り込んでいるか
💡ポイント:チェックリストで一つでも不安が残る場合は、再検討の価値があります。
まとめ
サウナ付き賃貸は、適切に設計・運営できれば強い付加価値を生むテーマです。一方で、電気・消防・維持管理といった実務課題を軽視すると、負担が重くなります。
重要なのは、「付けたいから付ける」のではなく、「成立させられる条件が揃っているか」を冷静に見極めることです。
次回は、サウナと並んで人気の高いガレージハウス(全国事例)を取り上げます。
用語紹介
- 外気浴
- サウナ後に屋外や風通しの良い場所で休憩する行為を指します。
- 200V電源
- 高出力機器を使用するための電源方式で、家庭用100Vとは別に配線が必要です。
