
はじめに
築古物件の空室対策として、「とりあえず白くする」リフォームは長年の定番でした。
しかし現在、その平均点リフォームは明確に効きづらくなっています。新築や築浅と正面から条件競争をしても、価格面で勝てないからです。
そうした中で注目されているのが、築年数そのものを価値に転換するヴィンテージ/レトロ賃貸という考え方です。
💡ポイント:ヴィンテージ賃貸は「古さの言い訳」ではなく「選ばれる理由」を作る戦略です。
ヴィンテージ/レトロ賃貸とは何か
ヴィンテージ/レトロ賃貸とは、築年数や当時の意匠を欠点として隠すのではなく、空間の個性・物語として積極的に活かした賃貸物件を指します。
重要なのは、「古いから残す」のではなく、「価値があるから残す」という意思決定です。
💡ポイント:「古い」と「汚い」を混同した瞬間に、ヴィンテージは破綻します。
なぜ今、ヴィンテージが選ばれるのか
背景には、明確な市場変化があります。
新築マンションの価格高騰と供給不足により、多くの入居者は「新しさにお金を払う」選択肢を現実的に取りづらくなっています。
その結果、合理的な入居者ほど「自分らしい空間にお金を払う」方向へと価値判断をシフトしています。
特に築40年以上の物件は、現行建材では再現できない太い梁、重厚感のあるタイル、当時の職人仕事といった本物の経年変化を持ち、これが強力な参入障壁になります。
💡ポイント:ヴィンテージ賃貸は「価格競争から降りる」ための合理的選択です。
代表的なレトロ賃貸のタイプ
① 昭和レトロ型

型板ガラス(銀河・夜空柄)、30角モザイクタイル、真鍮のドアノブなど、昭和期特有の素材を活かします。
ノスタルジーを感じる30〜40代に強く刺さる一方、清掃・補修の丁寧さが不可欠です。
② インダストリアル型

ラーチ合板の壁、露出配管、配線ダクトレール、OSB合板など、構造を「見せる」デザインです。
単身者やクリエイター層に人気ですが、やり過ぎると無骨さが不便さに変わります。
③ ナチュラルヴィンテージ型
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オークの無垢床、漆喰壁、リネン素材のカーテンなど、経年変化を前提とした素材選定が特徴です。
💡ポイント:世界観は必ず一つに絞り、「全部盛り」は避けます。
リノベーション設計の実務ポイント
リノベーション設計の黄金比:3対7の法則
ヴィンテージ賃貸の成功は、「残す3割」と「新しくする7割」のコントラストで決まります。
新しくすべき7割(インフラの現代化)
- 給排水管の更新(漏水リスク回避)
- 電気容量の増設(現代家電への対応)
- 断熱補強・内窓設置(快適性の底上げ)
- 水回り設備の刷新
あえて残す3割(物語になる部分)
- 味わいのある梁や柱
- 職人仕事が見える建具
- 経年で丸みを帯びた手すり
💡ポイント:「手入れされている古さ」だけが、価値になります。
管理・運営で失敗しやすいポイント
ヴィンテージ賃貸は、金融資産で言えば低コストで仕入れて高配当を狙うバリュー投資に近い性質を持ちます。
世界観が確立されると指名買いされ、市場の価格競争から切り離された安定収益を生みます。
一方で、「これは味」「これは不具合」の説明を曖昧にすると、クレームに直結します。
💡ポイント:管理の質が、そのまま利回りに反映されます。
出口戦略(将来の転用・売却)
世界観を作り込みすぎた物件は、売却や転用時に選択肢を狭めます。
一般賃貸に戻せる余地を残すことで、出口の自由度が大きく変わります。
💡ポイント:尖らせすぎないことが、資産性を守ります。
まとめ
ヴィンテージ/レトロ賃貸は、築古物件を安く貸すための手法ではありません。
市場背景・素材・インフラ・管理まで理解した上で設計すれば、賃料と居住年数を両立できる強力な戦略です。
次回は、さらに尖った世界観特化型(ファンタジー・和モダン等)賃貸を取り上げます。
用語紹介
- ヴィンテージ賃貸
- 築年数や経年変化を価値として活かした賃貸物件を指します。