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第三回:公正証書遺言とは?賃貸オーナーに選ばれる理由と実務上の安心感

Taro 2025年12月17日
目次
  • はじめに
  • 公正証書遺言とはどのような制度か
  • 公正証書遺言の作成手続と流れ
  • 公正証書遺言が選ばれる理由
  • 費用・手間と注意点
  • 公正証書遺言の最新動向:手続きのデジタル化
  • まとめ
  • 用語紹介

はじめに

第2回では、自筆証書遺言の特徴と注意点について解説しました。
手軽に作成できる一方で、形式不備や検認といった実務上のリスクがあることを整理しました。

では、なぜ多くの賃貸オーナーが最終的に「公正証書遺言」を選択するのでしょうか。
その理由は、相続発生後のトラブルを未然に防ぐための「確実性」と「安心感」にあります。

本記事では、公正証書遺言の仕組みや作成手続、実務上のメリット・デメリットを整理し、さらに近年進んでいる手続きのデジタル化の動きにも触れながら、賃貸経営の引き継ぎという視点で制度の価値を解説します。

公正証書遺言とはどのような制度か

公正証書遺言とは、公証役場において公証人が作成する遺言の方式です。
遺言者が内容を口頭で伝え、それをもとに公証人が法的に有効な文書として作成します。

作成にあたっては、公証人に加えて証人2名の立会いが必要です。
この点が、本人のみで作成できる自筆証書遺言との大きな違いです。

法律の専門家である公証人が関与するため、形式不備による無効のリスクが極めて低く、相続実務における信頼性が非常に高い制度とされています。


公正証書遺言の作成手続と流れ

公正証書遺言は、事前準備から完成まで、いくつかの段階を踏んで作成されます。
ここでは、一般的な流れを確認します。

まず、遺言の内容を整理します。
誰にどの財産を相続させるのか、賃貸不動産をどのように引き継がせるのかを明確にします。

次に、公証人に提出する資料を準備します。
不動産の登記簿謄本、固定資産評価証明書、本人確認書類などが必要になるのが一般的です。

その後、公証人が遺言内容を確認し、文案を作成します。
内容に問題がなければ、証人2名の立会いのもとで正式に公正証書遺言が作成されます。

完成した公正証書遺言の原本は、公証役場で保管されます。
遺言者自身が原本を管理する必要はありません。

公正証書遺言が選ばれる理由

公正証書遺言の最大のメリットは、相続発生後の実務が円滑に進む点です。
特に賃貸経営においては、この点が大きな意味を持ちます。

第一に、形式不備による無効の心配がありません。
公証人が内容をチェックしたうえで作成するため、法的要件を確実に満たします。

第二に、家庭裁判所での検認手続が不要です。
相続開始後すぐに、不動産の名義変更や売却、管理判断を進めることができます。

第三に、原本が公証役場で保管されるため、紛失や改ざんを巡るトラブルが起こりにくい点も重要です。

賃貸経営では、相続後も家賃収入や管理業務を止めないことが重要です。
その意味で、公正証書遺言は実務に非常に適した制度と言えます。


費用・手間と注意点

公正証書遺言には多くのメリットがありますが、費用と手間がかかる点はデメリットとして挙げられます。

作成費用は、遺言に記載する財産額に応じて決まります。
あくまで目安ですが、次のようなイメージです。

  • 財産額が5,000万円程度の場合:数万円台
  • 財産額が1億円前後の場合:10万円前後
  • 財産額がそれ以上の場合:さらに加算されることがあります

また、証人2名を自分で確保できない場合、公証役場に依頼して証人を手配してもらうことができますが、その場合は証人の日当が別途必要になります。

事前準備や公証役場との調整に手間はかかりますが、これらの負担は「相続後のトラブルを防ぐためのコスト」と捉えることができます。

公正証書遺言の最新動向:手続きのデジタル化

近年、公正証書遺言についても手続きのデジタル化が進められています。
2025年10月施行予定の制度改正により、一部の手続きがオンラインで行えるようになる見込みです。

具体的には、オンライン会議を利用した本人確認や意思確認、電子署名を用いた申請手続きなどが想定されています。
これにより、公証役場に何度も足を運ばなくても、自宅から公正証書遺言を作成しやすくなると期待されています。

ただし、これはあくまで「公正証書遺言」という既存制度の手続きがデジタル化されるものであり、遺言の方式そのものが変わるわけではありません。

次回の記事で扱う「デジタル遺言制度」は、これまでの方式とは異なる新たな仕組みとして検討されているものであり、この点を混同しないことが重要です。


まとめ

公正証書遺言は、費用や手間はかかるものの、相続実務における安全性が非常に高い制度です。
特に賃貸オーナーにとっては、経営の継続性を守る有効な手段となります。

費用の目安や最新のデジタル化動向を踏まえたうえで、自身の状況に合った遺言の形を検討することが重要です。

次回は、遺言制度そのものを変える可能性を持つ「デジタル遺言制度」について、現行制度との比較を交えながら解説します。

用語紹介

公正証書遺言
公証人が作成し、公証役場で原本を保管する遺言の方式です。
公証人
公正証書の作成などを行う法律の専門職です。
検認
家庭裁判所が遺言書の存在と内容を確認する手続を指します。

著者について

Taro

Administrator

首都圏在住。管理会社に勤務し、賃貸管理業に従事しています。 事業主側で不動産売買と収益物件の管理を経験し、その後、現在の管理会社に転身しました。 保有資格: 宅地建物取引士 賃貸不動産経営管理士

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