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第二回:高齢者等終身サポート事業者とは?賃貸オーナー・管理会社が知っておきたい「身元保証・死後事務・見守り」の中身

Taro 2025年12月22日 1 minute read
目次

  • はじめに
  • 高齢者等終身サポート事業者とは何か
  • 賃貸の現場で効くのは「お金以外」の支援
  • 身元保証(等サービス):賃貸で役に立つポイントと注意点
  • 死後事務:退去・残置物・死亡届など「止まりやすい実務」をどう動かすか
  • 日常生活支援・見守り:過度に期待しすぎないコツ
  • オーナー・管理会社が確認すべき「実務が止まらない」チェック項目
  • よくある質問
  • まとめ
  • 用語紹介

はじめに

第1回では、高齢者入居が増える背景と、賃貸実務で不安になりやすい論点(緊急時・保証人・判断能力の低下・死亡後の退去と残置物)を整理しました。

第2回は、その不安を現実的に下げる“受け皿”になり得る「高齢者等終身サポート事業者」について、賃貸の現場で必要な範囲だけを噛み砕いて解説します。

結論から言うと、終身サポート事業者は「家賃保証会社の代わり」ではありません。オーナーが本当に欲しいのは、家賃の保証だけではなく、緊急時の窓口と死亡後に実務を動かす段取りです。ここを整理すると、入居審査の見立てが変わります。

高齢者等終身サポート事業者とは何か

高齢者等終身サポート事業者とは、身寄りがない、または身近に頼れる親族がいない高齢者などに対して、主に次の支援を契約に基づいて提供する民間事業者です。

  • 身元保証(連絡先、入院・入居時の手続き支援、身元引受に関する調整など)
  • 死後事務(亡くなった後の行政手続き、葬送、賃貸の退去・残置物対応など)
  • 日常生活支援(安否確認、見守り、買い物・通院の付き添い等を担う場合がある)

ただし、ここが最初の落とし穴です。同じような名称でも、提供範囲は事業者と契約内容で大きく異なります。「終身サポート契約がある=全部やってくれる」と思い込むと、あとで齟齬が出やすくなります。


賃貸の現場で効くのは「お金以外」の支援

賃貸実務で終身サポートが効いてくるのは、主に次の2点です。

  1. 入居中の緊急時に「誰が動くか」が明確になる
  2. 死亡後の「退去・残置物・契約終了」が進む可能性が高まる

家賃滞納への備えは、基本的に家賃保証会社や保証人設計の領域です。一方で、オーナー側が本当に困るのは「連絡がつかない」「意思決定者がいない」「現場が止まる」瞬間です。終身サポートの価値は、まさにその“止まりやすい実務”を動かす点にあります。

身元保証(等サービス):賃貸で役に立つポイントと注意点

身元保証は“金銭保証”だけではない

賃貸で「保証」というと、家賃の連帯保証を連想しがちです。しかし終身サポートの身元保証(等サービス)は、金銭面だけでなく、次のような“実務の穴”を埋める役割を持つことがあります。

  • 緊急連絡先として連絡を受ける(24時間対応の体制がある場合も)
  • 入院時の手続き支援(必要書類、病院との調整、本人状況の確認など)
  • 退院後の生活再建の相談(介護サービス導入や施設検討に繋ぐ等)
  • 見守り・安否確認(別契約やオプションの場合が多い)

オーナー側の体感としては、「連絡先として本当に機能するか」がまず重要です。ここが担保されるだけでも、緊急時の初動は安定します。

連帯保証人になるかどうかは「必ず確認」する

終身サポート事業者が賃貸借契約の連帯保証人になるケースもありますが、必ずしもそうとは限りません。よくあるパターンとして、次のような違いがあります。

  • 連帯保証はしないが、緊急連絡先と生活支援は担う
  • 一定条件で金銭保証もするが、上限や免責がある
  • そもそも賃貸には関与せず、医療・介護寄りの支援に限る

入居審査で「終身サポート契約があります」と言われたときは、少なくとも「賃貸に関して何を担うのか(連帯保証/緊急連絡/入院時対応など)」を確認しておくと、後日の揉め事が減ります。


死後事務:退去・残置物・死亡届など「止まりやすい実務」をどう動かすか

賃貸側にとって、死後事務が一番“効く”理由

終身サポートの中でも、賃貸オーナー・管理会社にとって安心材料になりやすいのが死後事務です。なぜなら、死亡後の手続きが止まると、物件が止まるからです。

死後事務で一般的に想定される業務には、次のようなものがあります(ただし実施範囲は契約次第です)。

  • 関係者連絡(医療機関、警察、親族等との調整)
  • 行政手続き(必要な届出、各種停止手続き等)
  • 葬送・納骨の手配(本人の希望に沿う形での調整)
  • 契約整理(公共料金、携帯等の解約・精算など)
  • 賃貸借契約の終了に向けた連絡・調整
  • 室内の残置物整理、清掃、原状回復に向けた手配

賃貸実務の観点では、特に「賃貸借の終了に向けて動けるか」と「残置物整理が現実に進むか」が重要です。ここが曖昧だと、次の募集ができず、機会損失が積み上がります。

死亡届の“提出者問題”は、現場の負担になりやすい

孤独死(身寄りのない方の死亡)の場面で、オーナー・管理会社が戸惑いやすい実務の一つが「誰が死亡届を出すのか」です。一般的には親族等が手続きしますが、身寄りがない・連絡がつかない場合、手続きの段取りが見えづらくなります。

このとき、現場では警察・市区町村・関係者の調整が必要になり、状況によっては物件の管理者側が“家屋管理人としてどう扱うか”という論点が出ることもあります。だからこそ、死後事務の契約では、事業者が死亡届の提出を含む行政手続きについて、どこまで担い、誰とどう調整するのかを確認しておくと安心です。

重要なのは、「事業者が必ず提出する」と決め打ちすることではありません。行政・警察との調整を含めて“手続きが進む体制か”を見極めることが、賃貸側のリスク管理になります。

契約トラブルが起きると、賃貸側にも余波が来る

近年は、一部の心ない事業者による契約トラブルが問題視されてきました。国がガイドラインを整備した背景には、そうしたリスクから利用者を守る狙いがありますが、結果として貸し手側の実務が巻き込まれないための基準にもなります。

第4回では、トラブルになりやすい契約パターンや、オーナーが確認できるチェック項目を整理します。

日常生活支援・見守り:過度に期待しすぎないコツ

終身サポート事業者の中には、安否確認や見守り、買い物支援などの日常生活支援を提供しているところもあります。これは孤独死リスクの低減にも関係するため、賃貸側としても魅力的に見えます。

ただし日常生活支援は、事業者差が出やすい領域です。次の点は事前に確認しておくと安心です。

  • 見守りの方法(訪問/電話/センサー等)と頻度
  • 異常時の連絡フロー(誰に、どの順番で、どこまで対応するか)
  • 室内立ち入りの取り扱い(本人同意、鍵の管理、立ち入り条件)

「見守りがあるから大丈夫」と過信するより、“どの条件なら動くか”を確認しておく方が、現場では役に立ちます。


オーナー・管理会社が確認すべき「実務が止まらない」チェック項目

入居希望者が終身サポート事業者と契約している場合、条文を全部読む必要はありません。まずは「実務が止まらない」観点で、次の項目を確認すると判断が安定します。

1)緊急連絡先として機能するか

  • 24時間つながるか(夜間・休日を含む)
  • 誰が受けるか(コールセンター/担当者)
  • 連絡後の動きは何か(現場に来るのか、指示・手配だけか)

2)死亡後に「賃貸借の終了」と「残置物」に関与できるか

  • 死亡後、誰がオーナー・管理会社に連絡するか
  • 退去に向けた調整(解約、清算、鍵の返却など)を誰が進めるか
  • 残置物整理・清掃・原状回復の手配を誰が担うか
  • 死亡届など行政手続きについて、誰とどう調整する立て付けか

3)「やること/やらないこと(除外事項)」が書面で明確か

トラブルで多いのは「やってくれると思っていたのに、対象外だった」という齟齬です。契約書・重要事項説明書などで、次の点が明記されているかを確認すると安心です。

  • 提供するサービスの範囲(具体的に何をするか)
  • 提供しないサービスの範囲(何はやらないのか)
  • 追加費用が発生する条件(時間外、緊急対応、清掃・処分費など)

4)事業者の信頼性(健全性)も、オーナー側のリスク管理に直結する

終身サポートは長期契約になりやすく、将来の死後事務費用として預託金を預かるスキームもあります。もし事業者が途中で撤退・倒産すると、入居者だけでなく、賃貸側も“動かす相手がいない”状態になりかねません。

第4回で詳しく扱いますが、第2回の段階でも、次のような視点を持っておくと安心です。

  • 預託金や費用の管理方法が説明されているか(保全の考え方を含む)
  • 提供実績や運営体制があるか(担当者不在にならない設計か)
  • 契約解除・返金のルールが極端に不利でないか

よくある質問

Q. 終身サポート事業者がいれば、オーナー側は何もしなくてよい?

A. 何もしなくてよい、とはなりません。ただ、役割分担と連絡体制が明確になれば、オーナー・管理会社の負担は確実に軽くできます。大切なのは「契約がある」ではなく「何を担う契約か」です。

Q. 終身サポート事業者がいても、家賃保証会社は必要?

A. 必要になるケースが多いです。家賃保証は金銭債務の領域、終身サポートは緊急対応や死後事務など“生活と事務”の領域、と整理しておくと混乱しません。

Q. 見守りがあるなら、孤独死のリスクはなくなりますか?

A. リスクを下げることは期待できますが、「なくなる」とは言い切れません。見守りの頻度、異常検知の方法、対応時間、緊急時にどこまで動くかで実効性が変わります。契約内容と運用を確認しておくことが重要です。


まとめ

第2回では、高齢者等終身サポート事業者の支援を、賃貸実務に必要な形で整理しました。

  • 終身サポートの価値は、家賃保証というより「緊急時の窓口」「死亡後の段取り」など、お金以外の実務リスクを下げる点にあります。
  • 死後事務は、退去・残置物だけでなく、死亡届を含む行政手続きの“調整”まで見通せると、現場が止まりにくくなります。
  • 確認のコツは、緊急連絡、死後の賃貸・残置物対応、そして「やること/やらないこと」の明確化です。
  • 長期契約だからこそ、事業者の信頼性(健全性)もオーナー側のリスク管理に直結します。

次回(第3回)は、「死後事務委任契約」という少し難しいテーマを、賃貸オーナー・管理会社が実務で使える理解に落とし込みます。契約があるのに現場が止まる理由と、止めないために“事前に決めるべきポイント”を具体的に解説します。

用語紹介

高齢者等終身サポート事業
身元保証、死後事務、日常生活支援などを契約に基づき提供する民間の支援サービスを指します。
身元保証(等サービス)
金銭的な保証に加え、入院時の手続きや緊急時の連絡・駆け付けなど家族が担ってきた役割を代行する支援を指します。
死後事務
本人の死亡後に行う行政手続きや葬送、契約の整理などを、受任者が調整・実施する業務を指します。
残置物
退去や死亡後に室内に残された動産(家具・家電・衣類・生活用品など)を指します。

著者について

Taro

Administrator

首都圏在住。管理会社に勤務し、賃貸管理業に従事しています。 事業主側で不動産売買と収益物件の管理を経験し、その後、現在の管理会社に転身しました。 保有資格: 宅地建物取引士 賃貸不動産経営管理士

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