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第四回:その終身サポート事業者は大丈夫?「ガイドライン準拠チェックリスト」

Taro 2025年12月23日
目次

  • はじめに
  • なぜ「事業者の質」が賃貸リスクに直結するのか
  • ガイドラインはオーナーが確認してよい基準
  • ガイドライン準拠・事業者チェックリスト
  • 注意したい事業者の共通点
  • まとめ
  • 用語紹介

はじめに

第3回では、死後事務委任契約を軸に、「なぜ死亡後に物件が止まるのか」「それを防ぐには何を契約で決めておくべきか」を整理しました。

ここまでで、終身サポート事業者は賃貸実務において強力な味方になり得る一方、選び方を誤るとリスクにもなり得ることが見えてきたと思います。

第4回では、いよいよ核心である「事業者の見極め」です。国の「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を、オーナー・管理会社が実務で使えるチェックリストとして整理します。

なぜ「事業者の質」が賃貸リスクに直結するのか

終身サポート事業は、契約期間が長く、前払い金(預託金)を伴うケースも少なくありません。そのため、次のような事態が起きると、賃貸側も巻き込まれます。

  • 事業者が途中で撤退・倒産し、連絡先が消える
  • 契約内容が曖昧で、死亡後に「それは対象外」と言われる
  • 相続人とトラブルになり、オーナー側にも説明や対応を求められる

つまり、入居者本人だけでなく、貸す側にとっても「事業者の健全性」は重要なリスク要因です。


ガイドラインはオーナーが確認してよい基準

「入居者が契約している事業者の中身まで確認してよいのか」と迷う方もいるかもしれません。

しかし、ガイドラインは次の前提で作られています。

  • 高齢者は契約内容を十分に理解しづらい立場に置かれやすい
  • 契約の不透明さは、利用者だけでなく関係者にも不利益を及ぼす

そのため、オーナー・管理会社が合理的な範囲で確認することは、むしろ健全です。以下では、賃貸実務の視点から「最低限ここは見ておきたい」ポイントを整理します。

ガイドライン準拠・事業者チェックリスト

【チェック1】重要事項説明書(重説)があり、説明が行われているか

まず確認したいのは、重要事項説明書(重説)が作成され、契約前に説明されているかです。

  • 重要事項説明書が書面で交付されているか
  • 対面またはオンラインで、内容説明が行われているか
  • 質問に対して具体的な回答が返ってくるか

重説がない、または説明を省こうとする事業者は、ガイドラインを軽視しているサインと考えた方が安全です。

【チェック2】緊急時・死亡時の連絡体制が実務レベルで機能するか

  • 24時間365日つながる窓口があるか
  • 夜間・休日は誰が対応するのか
  • 連絡後、現場対応まで含めて動くのか

判断基準はシンプルです。「その番号に電話したら、実務が動き出すか」。この一点で考えると見極めやすくなります。

【チェック3】死後事務に「賃貸借の終了」と「残置物」が含まれているか

  • 賃貸借契約の解除を誰が行うのか
  • 残置物の整理・処分・清掃を誰が担うのか
  • オーナー・管理会社への連絡タイミングは明確か

ここが明記されていない場合、契約があっても物件は止まります。

【チェック4】相続人調査まで含めた運用になっているか

実務で最も助かるのは、事業者が相続人調査を具体的に行ってくれるかです。

  • 委任や職権に基づき、戸籍を遡って相続人を特定する運用があるか
  • 本人の生前意思(処分方針など)を文書化しているか
  • 相続人が判明した場合、契約内容を共有・説明する導線があるか

ここまで対応できる事業者であれば、オーナーや管理会社が相続人探しに奔走するリスクを大きく減らせます。

【チェック5】費用が「実費+報酬」として整理されているか

死後事務の費用が、寄附や死因贈与として全財産から取得される設計になっていないかは重要な確認ポイントです。

  • 実費と報酬の区分が明確か
  • 金額や算定方法が説明されているか
  • 過剰な金銭取得になっていないか

不適切な契約は、後に相続人との紛争に発展し、賃貸側も巻き込まれやすくなります。

【チェック6】預託金が「信託」などで保全されているか

預託金については、信託口座などで分別・保全されているかが極めて重要です。

  • 事業者の運営資金と分けて管理されているか
  • 信託等により、倒産時も資金が守られる仕組みがあるか
  • 残高や利用状況の報告が行われるか

これは入居者のためだけでなく、途中で事業者が消え、誰も動かなくなる事態を防ぐためのオーナー側の防御策でもあります。


注意したい事業者の共通点

  • 重要事項説明書を見せたがらない
  • 「全部お任せください」と言うが、範囲を明言しない
  • 費用の内訳や預託金管理について質問すると曖昧な回答になる

健全な事業者ほど、できること・できないことをはっきり説明します。

まとめ

第4回では、終身サポート事業者をオーナー・管理会社の目線で評価するためのチェックリストを整理しました。

  • 事業者の質は、賃貸実務の安定性に直結します。
  • 重要事項説明書、信託による預託金保全、相続人調査の具体性は重要な判断軸です。
  • ガイドラインは、オーナーが事業者を評価するための公式な物差しとして使えます。

次回(第5回)は、これらのチェックをクリアした事業者と、入居前・入居中・死亡時にどう連携して動くのかを、具体的な「実務フロー」として整理します。現場でそのまま使える形をお見せする予定です。

用語紹介

重要事項説明書
契約前に、サービス内容や費用、注意点などを説明するための書面を指します。
預託金
将来の死後事務等に備えて、事業者があらかじめ預かる費用を指します。
信託管理
預託金を信託口座等で保全し、事業者の倒産等の影響を受けにくくする管理方法を指します。

著者について

Taro

Administrator

首都圏在住。管理会社に勤務し、賃貸管理業に従事しています。 事業主側で不動産売買と収益物件の管理を経験し、その後、現在の管理会社に転身しました。 保有資格: 宅地建物取引士 賃貸不動産経営管理士

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首都圏在住。管理会社に勤務し、賃貸管理業に従事しています。
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宅地建物取引士
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