
はじめに
賃貸住宅の契約は、一般的に「2年契約」が多く、期間満了時に更新手続きを行うことで継続されます。
更新には、オーナーと入居者双方の意思確認が必要で、条件変更や更新料が発生するケースもあります。
更新を怠るとトラブルの原因となることもありますが、実務上は「自動更新(法定更新)」として従前の契約期間を引き継ぐのが一般的です。この記事では、契約更新の種類や注意点、そして更新時に確認すべき実務上のポイントを詳しく解説します。
契約更新の種類と特徴
賃貸借契約の更新には、大きく分けて「自動更新(法定更新)」と「合意更新」の2つがあります。
特に普通借家契約では、更新を前提とした運用が多く、定期借家契約とは明確に区別されます。
① 自動更新(法定更新)
契約期間満了時に、オーナー・入居者いずれからも更新または終了の申し出がない場合に発生する更新形態です。
いわゆる「自動更新」と呼ばれ、実務上は多くの物件で採用されています。
- 契約期間満了後も入居者が居住を継続している場合、法的に更新が成立。
- 更新後も従前の契約条件を引き継ぐのが原則(期間も通常2年とされる)。
- オーナーからの解約・条件変更には「正当事由」が必要。
更新料については契約書の定めが必要であり、更新料を徴収しない代わりに「更新事務手数料」や「再契約事務費」として設定する管理会社も増えています。
② 合意更新
契約期間満了にあたり、オーナーと入居者の双方が改めて契約条件を確認し、合意のもとで更新する方法です。
契約書の再締結や更新契約書の作成を伴う点が特徴です。
- 契約内容を見直し、家賃や共益費などの改定を行うことができる。
- 更新料・事務手数料の支払いを明確に規定できる。
- 書面による再契約でトラブル防止につながる。
なお、「再契約」という言葉は本来、定期借家契約の更新がない場合に新たに契約を結び直すケースを指します。
普通借家契約の場合は、期間の定めがあるものの、更新を前提とした「更新契約」が該当します。
更新時に確認すべきポイント
契約更新時は、家賃や期間の確認だけでなく、契約に付帯する情報も見直すことが重要です。
更新時の見落としが後のトラブルにつながることもあります。
- 契約期間の満了日:余裕を持って案内・対応する。
- 更新料・事務手数料:契約書に基づく明確な金額を確認。
- 家賃・共益費:相場や設備状況に応じて適正化を検討。
- 緊急連絡先:実際に連絡が取れるか確認し、連絡先変更があれば更新。
- 入居者情報:同居人・契約名義人が変わっていないかをチェック。
- 少額短期保険(火災保険など):有効期限や内容が更新されているか確認。
- 保証会社契約:保証契約の更新有無や保証料を再確認。
更新通知書にはこれらの項目を明記し、入居者に内容を理解してもらうことでトラブル防止になります。
オーナーが注意すべき点
- 更新案内の送付時期:満了日の1〜3か月前に通知するのが望ましい。
- 更新条件の変更:家賃・共益費などを変更する場合は、根拠を明示する。
- 更新拒絶の場合:「正当事由」が必要であり、補償金を伴うことも。
- 書面保管:更新後の契約書は必ず双方で保管し、電子契約も検討可能。
また、定期借家契約の場合は更新がなく、再契約が必要となるため、普通借家契約との違いを入居者に説明することも重要です。
入居者が注意すべき点
- 更新料・事務手数料:金額や支払方法を事前に確認する。
- 契約内容の変更:禁止事項や修繕負担の範囲が変わっていないか確認。
- 緊急連絡先・保険:実際に機能しているか、契約が有効かを点検。
- 退去予定の場合:更新前に意思を伝え、不要な費用負担を防ぐ。
- 更新意思の有無:
判例上、更新手続きをしなくても入居を継続している場合は「更新の意思がある」とみなされることが多い。
更新時には、オーナー・管理会社と連絡を取り合い、契約条件や費用について不明点を残さないようにしましょう。
まとめ
賃貸借契約の更新は、オーナーと入居者の信頼関係を維持するための大切な手続きです。
自動更新(法定更新)と合意更新の違いを理解し、更新時には契約書・連絡先・保険・保証契約などの付帯情報も含めて点検しましょう。
更新手続きを単なる形式ではなく、契約の見直しと安心の再確認の機会として活用することが、安定した賃貸経営と安心した入居生活の両立につながります。